入院後数日して、高齢者が嚥下困難を訴える。こんな状況はまぁ良く遭遇するものだが、今回「Schatzki
ring」に遭遇。
架空の「症例A」さんは、CTで食道下部の狭窄所見もあり、入院中に胃カメラをすることに。
日本と違い、アメリカの病院では緊急性を要しない入院中の内視鏡検査はハードルが高いのだが、今回はCT上悪い病変も考えられるということで「3日くらい待って」やってくれたことにしよう😱
Schatzkiリングとは?
なぜだろう、嚥下障害でバリウムやったときに最も多い頻度で見つかると書いてあるのに、今回初めてこの「名前」を聞いた。食道下部にできる膜状の狭窄。
食道狭窄の分類
解剖学的分類:AリングとBリング
Aは下位食道のSCジャンクション(Squamocolumnar)より少し近位側、最も下位食道括約筋の強い個所の平滑筋の収縮により生じるリング状の狭窄
BはSCジャンクションのところの薄い膜構造がリング状になったもの
食道ウェブとリングの違い
食道ウェブ:偏った(Eccentric)膜が食道内に突出したもの
食道リング:同心円板(Concentric)の組織が突出、通常は下部食道。多くは膜だが、タイプAだと筋組織の過形成。
Schatzkiリング
食道リングでは最も多い。Bリング→膜組織で、直径1.25㎝以下。嚥下困難で食道バリウム検査を受けた人の最大13%にみられる。「ほぼ」食道下部のヘルニア(Hiatal hernia)と関連する。まれに好酸球性食道炎と関連するが、その場合「多発性」病変であることが多い。
おまけ:食道ウェブ
ウェブの代表例は、Plummer-Vinson症候群(40-70代の白人女性の鉄欠、嚥下困難、食道ウェブが典型的、扁平上皮癌のリスクにもなりうる) -これは日本の国家試験でも勉強した覚えがある―鉄剤飲むと貧血より先に、嚥下困難が改善することも。
食道ウェブの原因となりうるものとして、Zenker's
diverticulum、皮膚科疾患(bullous pemphigoidなど)、免疫関連(骨髄移植後のCGVHなど)が挙げられている。
おまけ:架空の症例Aさんの経過
Aさんは、胃カメラで狭窄部の「拡張」をしてもらい、すぐに普通の食事が呑み込めるようになり無事退院。テキスト通り、Hiatalヘルニアもみつかった。オメプラゾール40mg1日1回で治療した群としない群で比較したデータがあるらしく(UpToDate)、消化器科の推奨のもと、わざわざパントプラゾールからオメプラゾールに変更して退院してもらった。
これをEBM(エビデンス・ベイスド・メディスン)というのだろうが、ただほかのメーカーの胃薬でも聞くのかどうか「知らない」だけなので、こういう診療は正直信じてない(別に変えなくてよくね?)。Head-to-Headでオメプラゾールとその他を比べた研究があれば別だが。
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