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総合内科医像の違いとジレンマ

といっても米国で働く外国人医師(IMGと呼ばれる)に限った話だが

一昨日の夜勤の際、同期として今年入職した夜勤専門のホスピタリスト(いわゆるnocturnist)も一緒にシフトに入っていて、愚痴をこぼしていたので、自分は興味深く聞いていた。

彼はパキスタンからのIMGで、ピッツバーグ大学関連の内科プログラムを終了して今のポジションについた。

彼は明らかにホスピタリスト、つまり病院診療の総合内科の仕事やその役割に満足しておらず、もともと2〜3年は今の仕事を続けてグリーンカードをとりつつ競争率の高いフェローシップへの応募をするつもりできたのだが、あまりに今の生活が激しすぎて消耗がひどいため、今年度終盤の地点で、続けるか、早めに次のステップに行くかを決めることにしたらしい。

米国の総合内科医の役割は日本・パキスタンを含めたアジア諸国とは大きく異なっていることも要因のようだ。

米国では総合内科医は、内科入院の大部分を受け入れ、入院管理をし、退院の調整まで行うわけだが、いざ、各臓器別の病気の診療となると、専門科へのコンサルトを行うことが圧倒的に多く、各コンサルタントとのコミュニケーションなど、ケアコーディネーター的な仕事や書類作業が多くなる。これは研究データでも示されているくらい明らか。

米国人からしてみればこれが現在の総合内科医の姿であり、それに興味がない人は大抵フェローシップに進む(各専門科にも色々と問題はあるようだがそれはおいといて)わけだ。なので、レジデンシー中に書類作業が多いだのコンサルトばっかりだの文句を言うことはあっても、総合内科医はどうあるべきだ、という医師像にまでツッコミを入れる人には同じ日本からの外国人医師以外から聞いたことはなかった気がする。

その同僚の話を聞いていると、まあ大体日本人医師が思う点とかなり似通っていることがわかった。単純に面白いと思った。悩んでいる同僚はかわいそうだけれど。

少し話を広げて、米国では総合内科と呼ばれる人たちは主にプライマリケア医になるわけだが、彼らの仕事はさらに僕らアジア系外国人医師の医師像からかけ離れている。何も自分はたちでは診断も治療もできないように感じることが多い。

主な仕事は予防医療や患者教育、電話での患者との会話、ケアデリバリーやコンプライアンスが悪い患者をなんとかして医療につなぎとめるのも守備範囲か。

もちろんその同僚は、プライマリケア医の仕事も理想像としては受け入れがたいようだった。確かに日本で総合内科と名乗るとなると、(コンサルトなしで)科をとわず病気を診断検査治療したりするので、なんでもできるのが理想像に近いのだろう。

文化的、社会背景的な違いが大きいので、別に米国の総合内科医が悪いとは言えないのだが、一生やっていく職業としては物足りないと言うのが結論だった気がする。やっぱり病気を病気を診断して治療するところまでセットになっていて、そのためにレジデンシーのうちからそうできるようにする教育をした方がいい、と言う意見だった。

難しい問題だなぁと思いつつ、その夜の任務を全うするのだった。

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