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大学院6週目:態度(Attitude)に関する理論

早くも秋学期も6週目。1学期3ヶ月ほどなのでまだ半分も終わっていないが、大量の態度に関する理論について学んだ。過去学んでこなかったSocial Psychologyの分野なので、新しく入ってくる情報量だけで言えば過去のコースに比べてもかなり多い。

しかも、実社会で起こる心理学的現象をどう理解・説明するかの理論が相当多いので、実用性が見出しにくい理論も多い。

例えば、
何かしらのタスクに対して、生徒にReward(ご褒美・報酬)を上げると、それがある間はパフォーマンスが上がるが、褒美をなくすと下がってしまう。

子供が好きでやっていることに対して褒美を渡していると、それをやることが好きでなくなってしまう。報酬のためにタスクをやっているという感覚が、純粋で好きにやることを妨げる。

2つの仕事・タスクがあって、一つが他方よりも相当つまらない仕事だったとする。つまらない仕事に割り当てられた人には、何の報酬も与えず、いい方の仕事に割り当てられた人に報酬を与えたとする。
いい方の仕事+報酬の人の方が仕事に対する評価(この物事に対する評価を学問的には態度と定義する)が高いと思いきや、実は逆になる。
報酬をもらわない人の方が、何のために仕事をやっているかの意義を見出す心理学的な力(ギャップを埋めるような作用)が働くので、つまらない仕事でも仕事への評価が高くなる。

例として、大学のクラブで新入生に恥ずかしい芸や大変なことをさせる文化が紹介されていた。これをするとその後団結力が上がったり、クラブ活動への態度が上がるという効果がある。「こんなことをするために入ったんじゃない」と思い続けるのは心理的に無理があるので、「これのために頑張ったんだ」というふうに脳は考えギャップを埋めようとする。

選択肢がいろいろあって、一つを選んだ時に、後で変更がきかない(例えば職探しなどはそうだろう)場合、後々選んだ仕事への評価が高くなる。自分のとった選択を正当化する作用がある。逆に、変更が許される場合、評価はより客観的に悪いところも等しく評価するようになるためか、評価は低くなる。

これらの理論は、自分の状況に置き換えても納得できる部分も多い(仕事に対する不満は過去の日記に散々書いている)。嫌な仕事に見合う報酬や変更の選択肢がないと、自然と自分の態度を変えることで埋めようとする。

なので不満は多くとも、今の仕事でもプラスなことを多々見出しているのでやっていける。しかし、金銭的な報酬が極端に少ないと、常に生活が苦しくなるので、ストレスや不満は一向に減らなかった。おそらく研究で使われるRewardは、給料が使われたことはなかったのだろうと推察。

しかし「なるほど、そうなのか〜」とは思っても

自分の患者や生徒に、あえてこれらの理論を適応したアプローチは取りにくい

より実用的な理論は、

選挙や企業の広告戦略にも使われるSocial Psychologyの”Persuasion(説得)”の分野だろうと思う。

医療分野でいうと、Motivational InterviewingのテクニックはCognitive dissonance theoryを使っている。Implementation Intentionもよく使われる。外来では具体的にいつまでに何をやるかという目標を患者と話し合うこともあるが、これをすると実際に行動に移す可能性が高くなる。

Inoculation theoryが、HPVワクチン、喫煙予防など若い人への健康増進・予防医療の分野で研究されている。

これを医師教育、医学教育へ応用し、今取り組んでいるトピックのレクチャーやコースデザインに取り入れるのをこのコースのプロジェクトにすることにした。

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