この日は感銘を受けるセッションが盛りだくさん。
Continuous improvement(CI)についての詳しい話。このコースが終わった後、自分の施設でQIを続けるには、そして病院にQIの文化を作流にはどうしたらいいかというお話。
まずは皆が改善のための方法(METHOD)を共有していないことには、文化が根付くことはない(皆がバラバラのことをやってしまうので)。方法を共有するときに何らかのモデルが不可欠。
インターマウンテンでは、7項目くらいのループを使っている。セッション前は、いわゆるPDSAサイクルの話をするのかなと勘違いしていたが、このインターマウンテンモデルも、PDSAサイクル(現場)にリーダーシップが関わるステップを加えたような構図になっていた。
そのサイクルの中でもClose the loopはとても重要で、QIプロジェクトをやったときにやりっぱなしになってしまわないように、フォローアップできるようなシステムが必要である。
QIをやるときに、プロジェクト・フォーカスドと、カルチャー・フォーカスドの二つのアプローチがあるが、CIを病院に根付かせる上ではカルチャー・フォーカスドが絶対的に良い。なぜなら、プロジェクト・フォーカスドは、問題が見つかったときにその都度QIプロジェクトをやって改善していく、というアプローチで、これだとプロジェクトはプロジェクト・リーダーの所有物となるので、プロジェクトが終われば効果も薄れてしまい持続性がない。結果や成果を得るのは早いが。カルチャー・フォーカスド・アプローチは、要はインターマウンテンCIモデルのことで、初めのしばらくは時間がかかるが、リーダーシップと現場が一丸となってやり(ここまでは大きくは前者と変わらないが)、長期的なゴール(ミッション)、ミッションを達成するためのストラテジック・ゴール(これも長期的なゴール)、それを達成するために今取り組むべきゴールと、組織としてのゴールをどんどん具体的にしていき、現場と目標を共有しつつ、色々な短期的に達成すべきゴールについては現場にオーナーシップを持たせて積極参加してもらう。上層部は、現場の働きをサポートすべくお互いに協力する。これがサイクルになるため継続し、文化が根付く。
ではそもそもカルチャーの定義とは何だろうか?発表者の意見が普遍的なものではないかもしれないが、このレクチャーでの定義は、全ての従業員を改善に積極参加(エンゲージ)させるシステムのことをさしている。
ここで、現場からどうやって改善のアイデアを吸い上げて、より積極的な参加を促しつつ、病院としてもいいアイデアを増やしていくかについての例。
アイデア・システムと呼んでいたが、インターマウンテンでは、クリニックでハドルボード(ホワイトボードに、アイデア、To
do listなどを貼って視覚化するなど)やアイデアカードを配布したり取り組んでいる。今の病院のカルテ室にも、似たようなボードがずっと貼ってあるが、2年近くいてほぼ内容がアップデートされていない。前の課長は、確実にQIの知識も経験も豊富でメンターには向いていたが、実際に自分がリードしてやる力がなかった感じがする(個人的な感想)。現場の人の積極的な参加を促すためのツールとして効果的に使わないと意味がなさそうだ。
次の話は、確か(疲れてスライドを見直す気にもならない)CPM(ケア・プロセス・モデル)について。エヴィデンスに基づいたベストな診療プロセス(主に診断、治療)をユーザーフレンドリーなアルゴリズム化するなどして、標準化しようというもの。これは現場の医師(QIのトレーニングを受けずに育った医者や、QIの文化の皆無な日本の医者―以前の無知な自分への戒めー)は結構嫌がり反発が大きいというのは、インターマウンテンでも20年前は同じだったようだ。
何とか導入できたとしても、ユーザー(医者や看護師)が使ってくれなければ効果は半減するわけだが、最も効果的なのは、Work
flowの中にうまく組み込むこと。電子カルテが発達してきているので、時間さえ惜しまなければ電子カルテに組み込むことも理論上は可能だが、結構複雑な作業になるらしく、インターマウンテンにおいても、どうやったらユーザーが必要なときに、簡単に、かつ確実にアクセスして使ってもらえるが試行錯誤しているらしい。特にインターマウンテンはすでに100以上のCPMを導入しているようなので、本当に困っているだろう。自分がCEO並みの権限があるならITの人員を増やして電子カルテにどんどん埋め込んで行くと思うが。
CPMを支えるモデルは、CIモデルを発展させたもので、前述のCIモデルを4つの柱(医療安全、無駄、ワークフロー(効率)、バリエーション)が支え、さらにその土台に現場の人たちのエンゲージメントというもの。
良いリーダーは、自分から現場、現場の人たちのオフィスに足を運んで、意見を求める。確かに、今の大学でもそうだ。総合内科長のような敏腕リーダーは(現場のオフィスには来ないが)、自分から現場に意見を求めて、データと擦り合わせて意思決定をしている。
ここで、年間1000以上のQIプロジェクトを行なっているインターマウンテンは、どうやってプロジェクトをトラッキングしているか質問したところ、核心をついていたらしく彼ら(発表者の多くがインターマウンテンの現役リーダーかエキスパート)がやようとしていることについて熱く語ってくれた。
現状ではゆるーくしかトラッキングしていないらしいが、それでも、データベースにアクセスすれば、プロジェクトタイトルとか基本情報は見れるらしい。
なぜトラッキングが重要かというと、似たようなプロジェクトがなされていれば、やった人たちから意見をもらえる。トレイニーが参加できるプロジェクトが見つかるかもしれない。トラッキングのデータベースがもし詳しい内容を含んでいれば、電カルと情報をリンクさせたり、過去のプロジェクトで使ったデータを参考にするのが簡単にできるかもしれない。
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