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QIコース・第3セッション振り返り(2日目後半)

チーム・ベースド・ケア(TBC)について。TBCと言われてもピンと来なかったし、いまだにピンと来ないが(ネーミングのセンスが微妙)、メインの話は2016年のJAMAに掲載されたインターマウンテンがやった大仕事の一つである。

アメリカのどこでも似たような状況だと思われるが、基本メンタルヘルス(心療内科・精神科)外来とプライマリケア外来は、完全に別離している。共存など一切していない上に(つまり医療者側からみてもコミュニケーションが取りづらく使いづらい)、結構な数の保険会社のプランがメンタルヘルス自体をカバーしていなかったりするので、患者側からもアクセスが悪い。保険でカバーされなかったり、プライマリケアからの紹介が必要だったりで、結局心を病んだ人の多くはまずプライマリケアに行くわけだ。

しかし、内科を含めプライマリケア医というのは、症状の軽い、もしくは安定した鬱、不安くらいしか治療する程度のトレーニングしか受けない。典型的な治療で症状がコントロールできないと、メンタルヘルスクリニックや心理療法士を紹介することになるが、前述のように、プライマリケアとメンタルヘルス外来は完全に別離しているので、医療者も紹介した後どうなるかわかったもんじゃないし(保険が通るかどうか確実でないし、結構予約がすぐとれなかったりする)、患者側も自分でネットで調べたり、保険会社やクリニックに確認したりしなければいけないこともありうる。

そこで、インターマウンテンは、TBCというモデルでもってMHIというプログラムを始めたのである。MHIMHはメンタルヘルスで、Iはインテグレーティッド?名前の通り、別離されていたメンタルヘルスをプライマリケア外来に組み込んだのである。

アイデアとしてはとてもシンプルだが、やるのは絶対に大変。TBC―チーム・ベースーを謳っているように、ただ精神科医や心理療法士がプライマリケアクリニックで働くというだけでなく、メンタルヘルスに詳しいケアマネを配置しケアコーディネーションを円滑にし、メンタルヘルスのスクリーニングをアップデートしナース助手を教育し、栄養士、はたまた周辺のコミュニティの医師も巻き込んでいる。

結果、再入院率は20−30%近く減り、コストも削減できたということで、JAMAに掲載されたのだった。今はMHIをインターマウンテン全体に広めようとし、さらにはAPPを作ってアクセスをさらに容易にするとともに、全世界に広めようとしている(実際ヨーロッパなどから視察にくるらしい)。APPの名前はAlluceoだったか?


最後のセッションが自分のツボに入ったのだが、

QIのケア・デリバリーサイエンスを医学教育に応用した取り組みについて話してくれた

まさか自分が将来やろうとしていることを話してくれるとは思っていなかった

そして自分が考えていることを数年前から小児科領域でやっている人がいるのも知らなかった

IPASSというハンドオフに使うツールをレジデントに教えたら、医療ミスが減ったという論文が山ほどあることを教えてくれた。もちろん、データにはQIのアプローチが取り入れられている。

さらにIPASSを応用して、回診の際のベッドサイドで使えるように改変したものを使って、回診を標準化しようとする試み(これがまさに自分が構想しているトピックとかぶる)もすでに論文を書き上げているらしく、

出版されたら是非読んで参考にしなければ、と思うと同時に

自分のアイデアが当たり前になるのも時間の問題であることに

良くも悪くも衝撃を受けた

彼は、毎回億単位の助成金をもらって複数施設で大規模にこれらのプロジェクトをやっており

逆立ちしても彼のようにはことはできないのだが

自分は助成金やリソースが限られていても

QIと教育の合わせ技でアウトカムに直結する仕事ができることを証明すべきなのだろう

個人的に、莫大な研究資金をつぎ込んだプロジェクトが終わったあと、どうやってその努力を持続させるつもりですか?と聞いたら「それは僕らが考えていかないとね」とかわされたが、時折必要な視察(指導医がレジデントのハンドオフを観察してフィードバックする)については、ティーチングの時間にカウントするなどしてクレジットを与えることで必要な人手は維持できるということだった。


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