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QIコース・第3セッション振り返り(1日目前半)

まだ2日目だが、とても感銘的な話が聞けたので忘れる前に振り返り

1日目朝は、Telehealthについてのお話。どこの大学病院でも何かしらのTelehealthが導入されているのだろうが、外来や、専門科のリモートコンサルテーションで使われることが多く、ホスピタリストとして働いていると中々Telehealthに接する機会がない。携帯が世に出てから10年で凄い変貌を遂げたように、Telehealthの分野のテクノロジーも、同じくらいのスピードで進化するのだろうか。全く接点がない状態で働いていると、すぐに置いてけぼりになりそうだ。

インターマウンテンではホスピタリストも病院間の患者のトランスファーにTelehealthを使っているということで、ケア・トランジッションの場面で導入できそうではある。ただ導入するには巨大なお金とサポートが必要になるので自分から働きかけて導入するのは非現実的。

次は医療コストの話。FixedコストとVariableコスト、Contributionマージン、Directコスト、Indirectコストなど。事務や経営の管理職ではない自分にはちょうどいい程度の内容。ベッドが空っぽであっても維持するためだけにもFixedコストはかかるとか、Suboptimizationといって、プロセスの中の一つを改善してもプロセスの他の部分が悪影響を受ける(コストなど)とか、普段全く考えないことだが、それがなぜQIとリンクするのかは勉強になった。

現行の保険制度では質を改善すると、合併症を予防するなどして医療請求書上では患者が健康に見えてしまうため、病院の収入が減るので、病院のリーダーシップはそれでも患者のことを考えて実行するのか、やらないのか、決めなければいけないこともある。医療機関は、コミュニティが必要とする全ての医療サービスを提供するのが使命だが、もうかる専門科だけに特化した病院もあるのが現実である(チェリー・ピッキングという)。

医療以外のことについては、自分が受けるサービス、購入するサービスの値段を知らないなんてあり得ないことだが、残念なことに患者も医者も、病院のファイナンスも、真の医療コストを知らない。日本では保険診療に関しては検査治療などの値段は一定だが、アメリカでは最も一般的な血液検査ですら病院ごとに値段がバラバラでさらにたちが悪い。

多くの病院ではチャージ・マスターという2000項目以上の処置や検査について、半ばいい加減に、かかるコストを推定・計算する方法を使っているところが圧倒的に多いらしい。研究でコストをアウトカムに使うことがあるが、病院間のコストを比べるには、標準化しなければいけないことになる。Nationalレベルのデータベースにあるコストのデータは果たしてどこまでこの標準化のプロセスができているのか?謎である。

インターマウンテンは、真に近いコストデータを得るためだけに8人くらいの人員を雇って2−3年ごとにアップデートしているらしい。それも、各種検査や処置について、現場に行って、オーダーしてから、結果が出るまでにかかった人手と時間から正確にコストをわりだす、という途方も無い労力によって成り立っている。これをコスト・マスターという。アメリカでは片手で数えるほどの病院しかやっていないらしい。コストは医療の質を改善するときにアウトカムとして使うべきものなので、コスト・データが作れるだけのサポートがあるのは非常に恵まれている。トランザクション・ファイルについては割愛。

アメリカと違い、日本は残念ながら、今だにFee for service(検査や治療をやった分だけお金が入る)+入院診療の一部DRG(日本ではDPC?診断名によってもらえる額が決まってくるため、無駄な医療サービスを提供すると病院のもうけがなくなる)のまま大して保険制度が進歩していない(はず)ので、無駄を減らすインセンティブが(よほど意識高い系の病院でない限り)働かない。

現状QIの入り込む余地は、日々の仕事の効率を改善することや既存の治療成績を使ったQIプロジェクトくらいだろうか?プロトコールを作ってケアのプロセスを標準化することはすでにされてはいるが、完全に現場の人たちに任させている印象しかない。やはり、病院のリーダーが気にするもの、治療成績やら、コスト削減と言ったアウトカムを示さないことにはQIは爆発的には広がらないと思われるが、そもそもコストや諸々のアウトカムをプロジェクトに使用するには病院の理解とサポートが必要になる。QIをその病院の文化にするには病院自体がQIをするためのインフラに投資してくれないといけない。

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