今日までこの略語を聞いてもなんのこっちゃと聞き流していただろうが、今後はこれらの単語を聞いたら一応反応するようになるだろう。
ACPAはAmerican College of Physician Advisorsの略。ACP(American College of Physician)によく似ているが全く違う団体・学会。今回一緒に働いたPhysician Advisorsの人が入っている。
ABQAURPは略語からして長すぎるが、上記の人たちに関連する専門医を提供するボードと呼ばれる機関:American Board of Quality Assurance and Utilization Review Physiciansの略。日本では学会が専門医を管轄していることが多いが(来年からの新専門医制度で変わるのだろうけど)、米国では各種ボード(Board)というところがBoard Certificationという名前で専門医を認定する。
そしてHCQMはBoard Certificationの名前。Health Care Quality&Managementの略で、医師に限らず、看護師、その他医療職種で資格を満たしていれば取れるが、その中でSubspecialty的なサブカテゴリーがあり、医師はPhysician AdvisorのSubcategoryが取れる。
お金と時間に余裕があればぜひ入会して勉強したいが、フェローシップ中は余裕がないので難しそう。内容は保険の仕組みなどもカバーされるのでそこらへん(というかPhysician Advisor全般)は全く持って興味ないが、カルテ記載の改善(Clinical Documentation Improvement)、患者安全(Patient Safety)、医療の質保証(Quality Assurance)、医師のパフォーマンス管理(Physician Profile)あたりは興味だけは人一倍あるので、せめてそこらへんのオンラインモジュールくらいは早めにやっておきたい。
専門資格(Board)については年間何十時間かはPhysician Advisor的な仕事をやった証明がないと資格がおりない。アドバイザーはカルテに記録されていることだけで「このひと入院する必要ないやん」と診療に当たっている医師を断罪するようなことを仕事にするの側面がとても嫌いなので(これは自分の歪んだ主観なので注意:客観的には保険のルールに則って正しい保険診療・請求を行うために必要な病院と社会にとって大事な事務方の仕事)、これで食っていくつもりは毛頭ないが、日本に帰国するときには誰一人とっていないだろうから持ってたら貴重だろうな。米国の専門資格は更新が必ず付いて回るし、実際の知識や実力が大事なので肩書きなどどうでもいいか。
ここからはいつものようにダラダラと愚痴。
ちなみに医療の質は、死亡率、合併症率、入院日数、再入院率だけでは図りきれないことが多い。相手にする患者層が違えば数字に差が出るのは質が悪いからとは限らない。
例えば基礎疾患のない患者ばかりを集める病院とそうでない患者の受け皿になる病院では同じ診断名・手術名だけで成績を比べるのは酷。例えば貧困地域ではどうしても教育と理解レベルが低くなってしまうのでどうしても同じ質と結果を出すのに何倍ものリソースを使わないといけないとか(リテラシー:この英語をそのまま横文字で使い始めた日本人は正直センスがない。わかりにくいことをわかりやすく伝えるのが頭のいい人のすることのはずだ。理解力ではダメなのか?)。
他の地理的なことでも差が出る。近くに病院がない医療過疎地では、専門医にかかることは困難。急病でもすぐにかかるのは困難。診断と治療は遅れがちになる。でもそれはアクセスの問題であって(入院)治療が悪いからではない。
米国ではせめてCaseMixIndexといった患者の持つ並存疾患等々で調整しようとはしているものの、明らかに患者の病像の複雑さを十分に捉えられていないので批判するような論文は以前から頻繁に目にしている。
再入院率などは最も批判があるところではないかと思うが、ハーバードのホスピタリストがやった全国規模のデータの解析では、各種社会的な要因、教育レベル、収入、基礎疾患など、現在考慮されていない因子を統計式に入れて計算すると、調整後の再入院率は成績優秀な病院と悪い病院間の優位な差がなくなるらしい。統計手法が複雑すぎて読んでて実際何をやったのかわからないが、要は現行の30日以内の再入院率は各病院の「医療の質」を全く反映できていないという結論だったと覚えている。
これは何を質の基準にしてどのように病院間の差を調整するのかというプロセス面での問題であって、医療の質を各個人の医師レベル、クリニック・病院レベルで測定する重要性と、その決められた基準の成績をよくしようとする努力(Quality Improvement)を否定することには全くならないのだが、日本の医療界・医師はものすごい抵抗があるだろう。
米国でも(カテ感染予防とか、予防接種とか予防系に関しては特に)うまくいっている部分もあるが、上記のようなうまくいっていないことも多いので。ただこれらの問題が解決するまで待っていては日本の医療は残念な方向に向かうだろう。
今まで以上に各病院が人間ドックに収益の活路を見出して宣伝し、混合診療の解禁が進んで自由診療を増やし、金を出せる患者から病院へお金が流れる仕組みが出来上がる。過剰に検査が行われればその分、異常なものが見つかり、保険診療で無駄な検査が行われる。と書いてみたものの、現状すでにそうなっているな。
これだけ医療を均質化しようとしている米国は、当然未だに医療の質に差が大きいからこそ、医療費の高騰が問題になっているからこそニーズがあるのだが、日本にも同じような概念が必要だと思っている病院や医師は一体どれくらいいるのだろう?
自分が受けた医学部教育と卒後教育が全てだとは言えないが、「もう医療も医療保険制度も一度崩壊するしかないよね」という考えを持っても仕方がない教育がなされている気がしてならない。自分がそうだったように。
ここからはいつものようにダラダラと愚痴。
ちなみに医療の質は、死亡率、合併症率、入院日数、再入院率だけでは図りきれないことが多い。相手にする患者層が違えば数字に差が出るのは質が悪いからとは限らない。
例えば基礎疾患のない患者ばかりを集める病院とそうでない患者の受け皿になる病院では同じ診断名・手術名だけで成績を比べるのは酷。例えば貧困地域ではどうしても教育と理解レベルが低くなってしまうのでどうしても同じ質と結果を出すのに何倍ものリソースを使わないといけないとか(
他の地理的なことでも差が出る。近くに病院がない医療過疎地では、専門医にかかることは困難。急病でもすぐにかかるのは困難。診断と治療は遅れがちになる。でもそれはアクセスの問題であって(入院)治療が悪いからではない。
米国ではせめてCaseMixIndexといった患者の持つ並存疾患等々で調整しようとはしているものの、明らかに患者の病像の複雑さを十分に捉えられていないので批判するような論文は以前から頻繁に目にしている。
再入院率などは最も批判があるところではないかと思うが、ハーバードのホスピタリストがやった全国規模のデータの解析では、各種社会的な要因、教育レベル、収入、基礎疾患など、現在考慮されていない因子を統計式に入れて計算すると、調整後の再入院率は成績優秀な病院と悪い病院間の優位な差がなくなるらしい。統計手法が複雑すぎて読んでて実際何をやったのかわからないが、要は現行の30日以内の再入院率は各病院の「医療の質」を全く反映できていないという結論だったと覚えている。
これは何を質の基準にしてどのように病院間の差を調整するのかというプロセス面での問題であって、医療の質を各個人の医師レベル、クリニック・病院レベルで測定する重要性と、その決められた基準の成績をよくしようとする努力(Quality Improvement)を否定することには全くならないのだが、日本の医療界・医師はものすごい抵抗があるだろう。
米国でも(カテ感染予防とか、予防接種とか予防系に関しては特に)うまくいっている部分もあるが、上記のようなうまくいっていないことも多いので。ただこれらの問題が解決するまで待っていては日本の医療は残念な方向に向かうだろう。
今まで以上に各病院が人間ドックに収益の活路を見出して宣伝し、混合診療の解禁が進んで自由診療を増やし、金を出せる患者から病院へお金が流れる仕組みが出来上がる。過剰に検査が行われればその分、異常なものが見つかり、保険診療で無駄な検査が行われる。と書いてみたものの、現状すでにそうなっているな。
これだけ医療を均質化しようとしている米国は、当然未だに医療の質に差が大きいからこそ、医療費の高騰が問題になっているからこそニーズがあるのだが、日本にも同じような概念が必要だと思っている病院や医師は一体どれくらいいるのだろう?
自分が受けた医学部教育と卒後教育が全てだとは言えないが、「もう医療も医療保険制度も一度崩壊するしかないよね」という考えを持っても仕方がない教育がなされている気がしてならない。自分がそうだったように。
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