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医学教育研究メモ:質的研究のProposalの注意点

Writing a proposal for qualitative studiesのまとめ

リーディングの一つであったBelgraveさん達の書いたHow Do We Talk to Each Other? Writing Qualitative Research for Quantitative Readersが良い仕事をしているのでそのまとめ。NIHのグラントのレビュアーとしての経験を元に質的研究のグラントProposalの問題点と、それらを克服するコツについてまとめてくれている。ありがたや。

Inductive researchers (qualitative) vs deductive researchers (quantitative)という対比の仕方は面白い。

■Intro
量的研究と違い特定の仮説がないので、Problem statementを明確に書く。これは前のユニットで詳しくやった。BackgroundLiterature reviewは量的も質的も同様に大事。

■Methods
Flexibilityは質的研究の強みでもあるが、量的研究者からすると、はっきりした方法がないと弱みに取られてしまう。これを避ける方法を考える。

Technical languageの使用:
注意点として多種多様な用語があり、同じ用語でも定義づけが異なるという問題がある。
“A sociologist might use grounded theory as a fairly generic term to indicate inductive qualitative research. A nurse might have something much more specific in mind, including Glaser and Strauss’s original work (1967) and the further development of that tradition by Strauss and Corbin (1990), with any deviations seen as “not grounded theory.” Use technical language, but do not use it alone.”
単に“constructivist grounded theory” (Charmaz, 2000)をやったというよりも、 この方法論を研究目的に絡めて説明する方が良い。すなわちどのようにデータ収集と解析が研究目的に役立つように設定されたかを述べる。
さらにいうと、Differences among “respondents,” “informants,” and “research participants” are not trivial。これらの用語もちゃんと説明する必要あり。


データソースの選択
データ元であるSiteParticipantsMaterialsに関する詳細を提供すること(Nature of data sourcesRationale for SelectionNumber)。量的マインドのレビュアーのために、“explicitly remind readers that your goals are inductive, goals of discovery and interpretation, rather than of hypothesis testing and generalizing.”と明記するのは確かにありかもしれない。

Observation of Social Worlds
ここはとてもいいアドバイスが詰まっているが具体的な例が多いので割愛。とにかくなぜ其の場所や人々を選んだのか、なぜ適切なのかそれとも単に都合によるものなのか。都合であったとしても強みは何か。自分がよく知っている人であればラポートを得られやすいなどの強みがある。弱みを隠すことはCredibilityを失うことになる。Multi-sitesが理想的ではある。観察が十分であることを保証するためのプランやRationaleを提供する。

インタビュー
量的研究者はRepresentative sampleであるか、という点を重視する。ここをパスしなければならないが、「それが本研究の主目的ではない」と書くだけでは理解は得られないだろう。2−3行無駄にしてSamplingについて丁寧に説明すべき。Theoretical SamplingPurposeful Samplingという用語を使うのは結構だが、常に詳細と透明性が必要。つまりどんな参加者をなんの理由で、どこでどのようにリクルートしたのか、そのConceptualPragmaticな理由の説明が必要。
前もって数を決めることは無理なのだが、「数」はどうしても必要。少なすぎればCredibilityに疑問を持たれ、多すぎれば研究を完遂できるかに疑問をもたれる。

Data collection
Observation of Social Worlds
質的研究のアプローチは“Unstandardized“のため、量的研究者は”Not rigorous”と簡単に切り捨てられやすい。よって詳細を書くことが必要。
全てのレビュアーが持つ疑問は、“What, exactly, is it you do in the field?” 観察の限界にも触れ、どうする予定なのかも説明すること。例えばField Noteを書く予定なら、観察中に書くのか終わってすぐに書くのか、観察項目を書くのか自分のReflectionを書くのか、何時間くらいかけるのか、など。
インタビュー
使用するテクニックだけを書くのは不十分。“For instance, are your questions designed to stimulate talk, provoke thought, or elicit specific pieces of information? How directive or nondirective do you plan to be? How will you use probes? Include a few sample questions and an estimate of how long you expect interviews to last, so reviewers can get a feel for what you plan to do.

医学教育研究ではここら辺は記述が弱い気がする。質的研究のコースで人類学分野の研究を読んだが、何をどのようにやったかが詳細に書かれている。 オーディオを書き起こす際はVerbatimのままやったかどうかは記述すべき。

コメント

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