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成人学習理論メモ(2)

今週の成人学習のコースは、MarriamさんのLearning in adulthoodの第4章がメイン。

KnowlesのAndragogy(アンドラゴジー)、すなわち成人学習論的なものは、これまで受けてきた教育関係のコースの全てで触れられてきた。もはやテッパンゆえに割愛。

新たな発見は、Knowlesの提唱した成人学習者の特徴に関するAssumptionsは批判に晒されてきたこと。確かに成人学習をたった4(ー6)個の特徴だけでわかった気になるのはおこがましいか。

それでも成人を教育するときのGuideとしては優秀なものなので、今でもAndragogyはどこかしこで使われている。

Rachalさんが提唱した今後の研究デザインに関する7つのスタンダード:自発的な参加、はっきり大人であること(つまり成人していても専ら大学に通うような学生を含めるなという意味)、到達目標を一緒に決める、評価はパフォーマンスによる、学習経験の満足度を測定すること、成人学習環境がIn Placeされていること、研究方法をしっかりする。

他に3つの理論を紹介している。これで全てではないが。

McClusky's Theory of Margin

使い道
実臨床でのティーチングでは与えるLoadの量を見定める時に有用な理論
同じ学習者をメンターしフォローできる時はLoadの量を調節できる

クラスメートの素晴らしい意見:「貧困層の人たちは、ちゃんと教育を受ければ、貧困層から抜け出せるのに」という考えはその人たちにとって酷な話。貧困により、生活は保障されず、助けも借りれず、劣悪な環境で暮らしているだけでLoadが貧困でない人よりはるかに大きい。Marginがすでにカツカツなので、教育を受ければいいだけいうのはMcClusky理論から言うと間違い。Powerを増やすかLoadを減らしてあげるところもやってあげないと無理よねって言う話。

成人時代は変化の時であって、常に大人は使うエナジー量(Load)と持っているエナジー量(Power)のバランスをとる。

Load to Powerの割合がMargin in lifeであり(別に引き算でもいい気がするが)、この余ったMarginを学習に当てると言ったところ。

LoadもPowerもInternal内因 とExternal外因の因子あり

仕事や家族で忙しいなどのLoadが大きければその分エナジーのMargin(あまり分)は減る。熱意や家族のサポートといったPowerが増えればMarginは増える。

”この二つの因子を可視化すれば、ストレスそのたのマネジメントへの改善策を見出す助けになる”的な書き方は苛立つ。

家族、職場などなど、コントロールできないものばかりだ。特にキャリアの初めにおいて仕事量のコントロール=チャンスを失う可能性が高いからだ。職場の環境に慣れて自分の進むべき道がはっきり決まれば、その時”No”といい始めるべきだと個人的に思う。

社会的な役割の変化と学習のリンクについて説明するには良い。確かにAndragogyにはかけている視点だが、教育者としてこの理論をうまく利用するアイデアはないな。

ここで、明確に、学習理論としてよりも、カウンセリングツールとして用いるほうが良いだろう、って述べている。批判的意見の紹介あり。初めからそういってほしい。

Illeris's three dimensions of Learning model

学習に関わる要素
Cognition:知識やスキル
Emotion:感情やモチベ
Society:外因的な交流;会話、参加、協力といったもの
の三つ
逆三角形の上部2つの角に、CognitionとEmotion。これらは内因的。相互作用。
逆三角形の下の角に、Society。

学習は常に社会、もしくは社会的コンテキストの中で起こる。

学習プロセスの5つのインプット:
Perception:感知
Transmission:見聞き伝聞的な
Experience:経験して学ぶ。他とオーバーラップする。
Imitation:モデルとなる人の真似して学ぶ
Participation・Activity:実際に参加して学ぶ。Experienceとかぶる気がする

これらを組み合わせた方がいいよねっていう話

Emotionつまりモチベが低かったりした場合、知識の習得Cognitionに影響が出るのはごもっとな話。分かりやすい。

Societyは、Interactionのほか、社会における学習者へのExpectationも含まれる。あることをマスターすることを求められるから学ぶというのもごもっともで。

とてもよく抽象化(Abstraction)・概念化Conceptualizationされていて理論としては優秀だが、これを元にティーチングを改善しようとするにはちと具体性が損なわれているような。

Jarvis's Learning Process

全ての学習は経験することから始まる。

ここはKolbのExperiential Learning と一緒。

Disjuncture(分離)が起こることが発端で人は学ぶ。

ある状況において、無意識のレベルで対応しきれないことが起こった時に、人は「どうしたら良いかわからない」と意識するようになり新しいことを学ぶなり準備をする。

「無意識に対応できない」経験がベース。

人は五感をフルに使って経験すると。

その経験に対しての対応として

Thinking Doing Feelingの3パターンで学習する

学習の結果として起こる変化。これはあまりに必要な知識とは思えずパス
無意識のレベルで対応できるようになるまで同じ経路をたどる

そして初めに戻る、一生続く

20年以上あるモデルらしいが、KolbのExperiential Learningのがはるかに実用性においてはるかに優秀だと思うのだが。

しかしこの本、相当な情報量をわかりやすく書いていて感心。

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